妊娠期のマイナートラブルで最もご相談が多いのは逆子です。
逆子(骨盤位)のポイント
1 縦位のなかで児頭が骨盤に向かうものを頭位といい、児骨盤が下方に
あるものを骨盤位という。
2 骨盤位の頻度は、妊娠末期ではおおむね3~5%である。
3 骨盤位は妊娠中期では約40~50%にみられるが、妊娠末期には3~5%
に激減することから、正常胎位に誘導するなんらかの機序が存在すると想定
されている。
4 正常胎位に誘導する機序として、子宮の形態変化が考えられている。
5 東洋医学では骨盤位のことを胎位不正という。代表的な病証として、
①気血両虚の胎位不正、②気滞の胎位不正、③脾虚の胎位不正がある。
6 骨盤位の基本穴は至陰である。
7 骨盤位の治療として、至陰の透熱灸と三陰交の灸頭鍼がよく用いられている。
1)東洋医学からみた骨盤位
東洋医学では、骨盤位のことを胎位不正という。古医書には横産、逆産などとして、
胎位異常が記載されている。胎位不正の代表的な病証を示す。
(1)気血両虚の胎位不正
虚弱体質で気血が不足しがちなところに妊娠すると、一層気血を消耗し、体位変換の
力が低下して発症する。
妊娠後期の胎位不正に、やせあるいは肥満であるが筋肉にしまりがない 息切れ、
疲労感を随伴し、舌質淡白、脈は細で弱を呈する。
(2)気滞の胎位不正
情緒が抑うつし、肝気欝滞となって気滞が生じ、そのために胎位の転位が阻害される。また、寒涼刺激を受けて気機が凝滞したりしても胎位不正となる。
妊娠後期の胎位不正に、胸苦しい、上腹部の脹って苦しい、精神抑うつ、よくため息をつくなどを随伴し、脈は滑あるいは弦脈を呈する。
(3)脾虚の胎位不正
脾虚のために水湿が停滞し、湿邪の停滞が胎児の転位を阻害する。
妊娠後期の胎位不正に、肥満傾向(筋肉のしまりのない肥満)、身長が重い感じ、
疲労感、食欲不振、少食、浮腫などを随伴し、舌質淡白、胖大、脈は滑あるいは
濡脈を呈する。
2)鍼灸治療
骨盤位の鍼灸 治療として古くから至陰の灸が用いられてきた。類経図翼(張介濱)や和漢三才図会には至陰の灸が有効であると記載されている。今日でも、骨盤位の矯正には至陰の灸が行われている。
(1)気血両虚の胎位不正
鍼灸治療は、気血を補うことを目的に行う。
参考例:至陰、足三里、三陰交などを用いる。
(2)気滞の胎位不正
鍼灸治療は、肝気欝結による気滞を解消することを目的に行う。。
参考例:至陰、内関、太衝などを用いる。
(3)脾虚の胎位不正
鍼灸治療は、脾気を補うことを目的に行う。
参考例:至陰、三陰交、陰陵泉などを用いる。
3)鍼灸治療の適・不適
骨盤位に対する鍼灸療法は原則的に適応となる。しかし、子宮の奇形、多胎妊娠、
重症妊娠中毒症、前置胎盤の場合は不適である。なお、過短臍帯、臍帯巻絡、
羊水量の減少などがある場合は、鍼灸治療による矯正は困難とされている。
★逆子治療の特効穴