未病治
最近、テレビのCMなどで「未病」という言葉をよく耳にします。未病とは病気の初期や罹りかけという意味ではありません。正確にはこれから病気になる可能性がある健康な状態のことを言います。
そしてその未病を治すことを未病治と言い、東洋医学において最も高尚な治療になります。
健康な状態を治す?ちょっと不思議ですが、病気にならないように健康なうちから心身のバランスを調整して、より良い状態を保つという予防医学のことだと解釈できます。
東洋医学は、人の体を一元的にとらえ、エネルギーの過不足や停滞を調えることで、「自然治癒力」を高め、様々な症状に対応する医学です。
「未だ病にならざるものもを治す」「未病治」を実践する医学こそが東洋医学の叡智であります。
ツボとは
凝っていると感じたときに押すと気持ち良い、いわゆる「ツボ」。 民間療法だと思われがちですが、『はり師』『きゅう師』『あんま・マッサージ・指圧師』という国家資格のもとに、わが国では治療が行われており、2006年にはツボの位置に関する世界基準が世界保健機関であるWHOによっても確立されています。
東洋医学の世界ではツボのことを正しくは「経穴(けいけつ)」と言います。 おそらく経穴の「穴」という文字からアナ→くぼみ→ツボという呼び名が一般的となったのでしょう。
「ツボ」の正体である経穴と経絡の関係
一般的に「ツボ」は押すと気持ちが良いところ、身体に良い影響を与えるところ、という認識をされていると思いますが、「思うツボ」「ツボを押さえる」「ツボに入る」など、日常的な言葉の意味合いから考えても、ものごとの要点を連想させる言葉だと思います。
また道具としての「壷」で考えても、古来より大切な食糧や水などを貯蔵するなど、内部に大切なものをしまう役割を果たす道具が連想されるでしょう。こうしたことから、「ツボ」は何だか身体の大事な要点に関わっているもの、というイメージを持たれるかも知れません。
「ツボ」の正体である「経穴」とは、身体の内側と外側を通過するエネルギーが通る道と考えられている「経絡(けいらく)」の中継地点であり、エネルギーが注がれる場所であるとされています。
WHOの定義では全身のツボの数は361個。
特に 筋と筋の間筋と腱の間
筋と骨の間
関節のふくらんでいる部分
などに多く存在するとされています。
陰陽五行思想
古代中国では、自然界のあらゆるものを陰(いん)と陽(よう)に区別していました。たとえば、太陽は陽で月は陰、奇数が陽で偶数が陰、表が陽で裏が陰という具合になります。こうした思想を陰陽思想といい、この陰陽思想はやがて五行と結びついていくことになります。
五行の思想は自然界は木(もく)、火(か)、土(ど)、金(ごん)、水(すい)の5つの要素で成り立っているというものでした。五行の行という字は、巡るとか循環するという意味があります。5つの要素が循環することによって万物が生成され自然界が構成されていると考えられていたわけです。
この五行(5つの要素)の相互間には、相性が良いとされる「相生(そうじょう)」、相性が悪いとされる「相剋(そうこく)」、ますます盛んに強くなるとされる「比和(ひわ)」があります。
この陰陽五行の考え方も今日の東洋医学の治療に反映されています。
生命活動に重要な3要素
人間の生命活動に必要な3つの要素、それが「気(き)・血(けつ)・水(すい)」です。
「気」はエネルギー。「血」は血液、「水」は体液のこと。
この3つが体内を循環することによって、私たちの健康は保たれているのです。
ですから「気・血・水」のどれかが不足したり、流れが滞ったりすると、身体の不調が起こるというのが東洋医学の考え方でもあります。
気:体のエネルギー源。体の各機能を動かし、血液や水分の流れをスムーズにし、新陳代謝を促す働きを持っています。
血:血液のこと。健康を維持するために、全身に栄養を運び、老廃物を回収する働きがあります。
水:胃液や涙など、体内の水分のこと。体全体を潤し、体内を循環して体温調節や関節の働きをなめらかにします。
身体の中から健康に!
食材のパワーを味方に!
カロリーや栄養素の計算ではなく、食べ物の持つ「味と性質」から食事を考える。これが、食養生の基本です。
食材には「五性(温性・熱性・寒性・涼性・平性)」や「五味(酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かんみ※))」といった性質がありますが、その特性を季節や体調の変化に合わせて取り入れることで、食事から身体を整えるのです。
難しいことのようですが、実はこうした食材選びは普段からごく普通にやっていること。例えば、身体や脳が疲れていると甘いものが食べたくなったり、寒い時期には身体を温める辛い料理がおいしく感じられたり。そんな風に、私たちはその時々で身体が求める食べ物を自然と選んでいるのです。
食養生は、こうした食べ物の特性を積極的に取り入れ、健康な身体づくりに活かす中医学(中国漢方)の知恵。日々の食事は、今の健康だけでなく5年、10年先の身体づくりにもつながります。
いつまでも元気に過ごすためにも、まずは食材の持つパワーを知り、自分の身体に必要な食べ物をきちんと選ぶことを心がけましょう。
※鹹味=塩辛いという意味
「五性」「五味」をバランスよく
食べ物には「五性」「五味」といった性質があり、それぞれに違った働きがあります。毎日の食事では、まず「五性」「五味」をバランスよく摂ることが大切。その上で、自分の体調や季節に合う食材を積極的に摂り、身体のバランスを整えていきましょう。
また、旬の食材を上手に取り入れることもポイントです。自然の恵みとはよくできたもので、夏には身体を冷やす食材が、冬には身体を温める食材が多くなり、それぞれ季節に合った働きで自然と身体を整えてくれます。旬の食材はおいしくて栄養も豊富なので、積極的に取り入れましょう。
カラダにやさしい食べ方で食材のパワーを活かす!
身体に合った食材選びはもちろん、食事の「食べ方」にもちょっとした気配りを。身体に負担をかけない食べ方を心がけ、食べ物のパワーを十分に活かしましょう。
元気な脾胃で食養生の効果アップ!
食養生は“ 食べること”が基本。いくら身体にいい食材を選んでも、食欲がなかったり、しっかり栄養を吸収できなかったりしては食材のパワーを活かしきれません。食欲不振や胃痛などの不調を感じているときは、まず脾胃(胃腸)を元気にして機能を高めることが大切です。
脾胃を元気にする食材
・大豆 ・山芋 ・米 ・りんご ・サンザシ
・鶏もつ ・生姜 ・八角 ・山椒
・カルダモン ・クローブ ・ナツメグなど